彼は、ある罪人が処理されることを知った。
彼が副知事を務める都市にある強制収容所が
撤去されることに伴う処置である。
報告を受けて、彼は瞳を閉じた。
長い、長い、沈黙が訪れる。
窓の外には晩夏の嵐。
驟雨と稲光が、彼の背後に鬼のような影を浮かび上がらせる。
彼は、思いを馳せていたのだ。
それは、彼がまだ、阿久津将臣と名乗っていた若き時代。
特別高等人の最終試験を受けたあの田舎町。

初めて友人と呼べるような男と出会い、苦難を共にした。
男の息子は彼を破り、離れていったが男は、もう、いない。
輝かしいあの夏の日々は、もう、消えてしまった。
宝石のように大切にしていた記憶が
彼の錆びついた心に語りかける。
『あなたをお慕いすることを、許してください』
凛々しく上品な音に弾かれるように、彼は目を見開いた。
愛しい人との儚い夢。
それは、二度と取り戻せぬ過去であり-
法月将臣に、悠久に問われる罪だった。

罪を犯すと『特別な義務』を負わされる社会。
義務を負った人々を更正指導する『特別高等人』という
職業を目指す主人公・阿久津将臣は、
その最終試験のため、とある田舎町を訪れる。
持ち前の身体能力と頭の鋭さで
次々と難関を突破してきた将臣だが、
通称『私生活がない義務』を負う少女・雑賀みぃなと
出会ってからは運命の歯車が狂いだす。
真夏。
森田賢一が生まれるより昔の物語。
不屈の野心を胸に抱いた青年は、
次第に車輪の国に呑まれていく。
賢一と毎日を過ごす事になった夏咲は、
いつもぼけーっとしながらも学園生活を満喫していた。
夏休みに入り何をして遊ぼうかと考えていた二人は、
ドタバタ騒ぎを予期させる一枚の紙を見つける。
まなとの再会を目指して、
さちは絵の修行も兼ねて各地を転々としていた。
そしてついには世界にまで手が届くことになり、
外国で絵画活動を始めることになる。
そんなさちの前に、新たな関門が……。
灯花は、料理人になることを夢見て、
毎日修行に明け暮れていた。
あまあまでなあなあな毎日に、
たいした脈略もなく、
灯花を中心とした料理大会が開かれることになる。
裏で糸を引くのは魔か磯野か。
璃々子と賢一は、
都会に出立する準備を進めていた。
賢一が本当に“漢”になったのか……
お姉ちゃんのサディスティックで
デンジャラスな試練が始まる。
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