【星至】
「そういえば、ここまで登ってくるのは久しぶりだなぁ………」


 あたりを見回していた僕はそんな感慨にとらわれた。

【恋歌】
「昔はここでよく遊んだよね」


れんちゃんもそうなのか、歩くのと食べるのを止めて笑顔であたりを見回しはじめる。
ずっと昔、思い出せないほど小さな頃から、この裏山は僕とれんちゃんの遊び場だった。
幼稚園に上がって銀ちゃんがそこへ加わると、僕らは一層この山に入り浸るようになった。
管理事務所があって適度に人の手が入ったこの小さな山は、僕らの格好の遊び場だった。
春には花が咲き、夏には小川で泳ぎ、秋には木の実を拾い、
冬には雪で遊んだ。この山の事なら僕らは誰よりも詳しかった。
けれど中学校へ上がった頃から僕らはここへ来る事が少なくなっていた。
中学生になって勉強する時間が増え、部活動も忙しくなった。
すると自然とこの場所へ足を向けなくなった。
成長して身体を使う遊びをする事が少なくなったのもその一因だっただろう。

【純友】
「俺もだんだん思い出してきた。確かこの向こうに秘密基地があったんだよな」


【星至】
「銀ちゃんがエッチな本隠してたところ?」


【純友】
「そうそう」